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医者、用水路を拓く

今日のおすすめは、中村哲著『医者、用水路を拓く』(石風社)です。
アフガニスタンで医療活動をしていた著者は、
大干魃のため、汚水による赤痢で亡くなる子どもを見て、
「水があれば助かる」と、井戸を掘り始めます。

しかし水位が下がり、さらに多くが農民であるアフガンの難民が戻るには、
農村の回復が不可欠であると悟り、灌漑用水事業を決意します。
本書は、13㎞にわたる用水路を完成し、
緑の大地を蘇らせるまでの記録です。

財源は著者が代表を務めるペシャワール会に寄せられた
日本の一般人からの寄付のみ。
極めて限られた予算の中で、経験もない著者が自ら重機を操作し、
延べ38万人の地元作業員と共に切り拓いた用水路工事は、
アフガン政府でさえ手をつけられなかった難所、
厚い岩壁、夏の雪解け水の激流を相手の作業でした。

故郷福岡にある山田堰の伝統工法などをヒントに、
日本人の援助がなくなっても、地元の人だけでできる方法を考えながら、
厳しい自然の試練に試行錯誤を繰り返す様子が細かく書かれています。

その過程を、
「これまでの思慮を欠く計画に思いを馳せ、
“堰の完成見通しが立つまで帰国しない”と心に決めて腹をくくった。
 この絶対的な機械力欠乏の中で、
 脳髄を絞り出すように方策を考える日々が続いた」と綴っています。

キリスト教徒である著者は、イスラムの人々の文化・歴史を尊重し、
時には部族争いの仲裁をし、米軍が雇い、洪水被害を拡大させた
トルコ、インドの道路会社の人間と渡り合います。
地元の村長に抱え上げられてしまうくらいに小柄で、
テレビインタビューなどで話すときのボソボソしたお声と
アフガンの人のために、当たり前のように危険を顧みず、
用水路完成に向かって突き進む姿は、
あまりにも対照的です。

ところで、本の最初のほうに、
バーミヤン石仏破壊が起きた状況が記されています。
2001年、アルカイダをかくまうとされた
タリバーン政権への国連制裁が下されたアフガニスタンは、
すでに大干魃で4000万人が飢餓線上にいる状況でした。
その国の食糧を絶とうとした国連制裁は、本当に正しかったのか。
貴重な文化遺産を壊す暴挙を行わざるを得なかったタリバーンの声が
私たちに届くことはありませんでした。
本書には、日本にいたらわからない大事なことが、
たくさん書かれています。
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