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逝きし世の面影

今日のおすすめは、渡辺京二著『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)です。
幕末から明治にかけて訪れた外国人が見た日本に関する記述を、
日本近代史家の著者が丹念に集めています。

役人や研究者・宣教師などの人々の目に映った日本は、
「素朴で絵のように美しい」国であり、
それらが開国によるヨーロッパ文明の流入によって消えゆくことを予見し、
そのことが「日本の真の幸福となるだろうか」と
当の開国を迫る側の外国人が記していました。

それほど惜しまれた日本とはどのようなところだったのでしょうか。
例えば「陽気な人びと」の章には、日本人が
大人から子どもまで幸福で満足そうであり、
「笑い上戸で心の底まで陽気である」
という感想が何人もの記述にみられることが書いてあります。

「親和と礼節」の章には英国の詩人、エドウィン・アーノルドの
言葉が紹介されています。
「生活を飾るものとしての自然へのかくも生き生きとした愛、
 美しい工芸品へのこのような心からのよろこび
 …子どもへのこんなやさしさ、両親と老人に対するこのような尊重、
 異邦人に対するかくも丁寧な態度」はこの国以外にないと言い、
「生きていることをあらゆる者にとって
 できるかぎり快いものたらしめようとする社会的合意、
 社会全体にゆきわたる暗黙の合意は、
 心に悲嘆を抱いているのをけっして見せまいとする習慣、
 とりわけ自分の悲しみによって
 人を悲しませることをすまいとする習慣をも含意している」
と述べています。

将軍から庶民まで、生活は質素でシンプルであり、
貧しい人はいるが、人びとは分け合うので、
工業化社会のもとでの陰惨な貧困とは異質であったことが
書かれています。

羽織の紐だけ、硯箱だけを売る店など、
店が特定の商品に特化することで
規模の小さい店が棲み分けて存在し、
それぞれ自分の作った商品を自分の人格として
満足と責任を伴うものとしてそこに展示していたことなどは、
とても興味をそそられました。

600ページを超える大著ですが、
ページを繰り出すと止まらなくなる本でした。
日本近代の建設で滅んでしまったと著者が書いた「逝きし」日本は、
去ってしまったとおしまいにするにはもったいないほど魅力的です。

ここで紹介しきれないたくさんの興味深いことが書かれているので、
もしお時間があれば一度手にとってみていただければと思います。

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