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さわり

今日のおすすめは、佐宮圭著『さわり』(小学館)です。
琵琶奏者として武満徹「ノヴェンバー・ステップス」に初演から参加し、
大喝采を浴びた鶴田錦史の生涯を描いています。

琵琶は今存亡の危機にあるそうですが、
大正時代は大変盛んだったことを本書で知りました。
鶴田錦史はその時期、天才少女琵琶師として一世を風靡します。

やがて結婚した錦史は夫に裏切られ、
二人の子供も手放し、琵琶も捨て、水商売を中心とした実業家となります。
ここでも才覚に恵まれた錦史は商売を成功させ、
ついには女も捨て、以後生涯男装を通します。

実業家として成功した後、再び琵琶の世界に戻ってから10年ほど経た50代なかばに、
錦史は映画音楽の奏者として武満徹と出会います。
そこで曲作りに加わり、自ら楽器の改良まで行った錦史の琵琶は
それまで西洋音楽の世界にいた武満に大きな影響を与えます。

そしてこの出会いが「ノヴェンバー・ステップス」へとつながっていきます。
武満はこの曲を、まったく違う性質を持つ西洋の楽器と日本の楽器を用いながら、
対立させるのでも融合させるのでもなく、
波紋のように両者が拡がって音が増えていくものにしていきます。

本書には錦史のライバルと言われた少女琵琶師の生涯も
並行して描かれます。
ともに過酷な運命に負けることなく生き抜いた女性の
強く、まっすぐな足跡です。

それだけでも十分に読み応えのある本ですが、
難解だと遠ざけていた「ノヴェンバー・ステップス」が作られた過程を知り、
ぜひ聴いてみようと思えたことが、私にとっては思わぬ収穫でした。

小澤征爾指揮のニューヨークフィルでの初演の際、
邦楽への偏見に満ちたふるまいをしていた楽団員が打ちのめされた演奏、
バーンスタインが涙を流した演奏とは
どんなに鬼気迫るものだったかと思います。

また読み返すだろうと思う1冊です。
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