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弟子

今日のおすすめは、中島敦「弟子」(ちくま文庫『中島敦全集3』収録)です。
子路が孔子の弟子となり、生涯を閉じる迄を描いています。

怪物のような勇者・智者を見聞きしてきた子路が
師となった孔子に見たものは、「最も常識的な完成」でした。
知情意から肉体の諸能力まで伸び伸びと発達していながら、
それらが均衡のとれた豊かさであることに目をみはります。
そして、以後変わることなく師を敬愛し続けることになります。
理想主義を曲げない孔子が国の役職を降り、放浪の身になった時にも
他の誰よりも「欣然として(よろこんで)」従ったのは子路でした。

孔子もまた、乱暴なところもある子路の「純粋な没利害性」を
美点として、誰よりも認めます。

乱世で、理想を貫くことが今よりずっと難しかった時代に、
孔子は不遇に甘んじます。
その時、孔子は世の中と人々のために嘆き、
子路は師のことを思い、泣くのでした。

孔子より9歳年少の子路が義に生き、生涯を閉じるまで
この師弟関係がつづいたことが描かれています。

本書の魅力は、内容の良さとともに、
山本夏彦氏が文語文について言った「朗唱にたえる」文章にあります。
リズムのある無駄のない文章は、
何度読んでも飽きることがありません。

さらに、孔子と様々な弟子の会話の中に、
論語からの引用がいくつも出てきます。
論語への入口としてもよい本かもしれません。

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